2013年1月5日土曜日

途上国×技術×キャリア その5 -決断-


前回の続き。
今回は夢を実現する為の基軸を見つけるまでの軌跡を書く。


6.  軸の決定

6.1 試行錯誤の2ヶ月
2回目のケニアからの帰国でデルフト工科大学への留学への意欲はなくなってしまった。その主な原因は、プロダクトのOut Inには限界があり、自分はもっと現場に近いアプローチをしたいという想いからであった。
さて、それでも今まで1年以上留学を志して来て、その目標を失った時の喪失感はとてつもなく大きかった。

その結果、自分の性格上、常に将来の目標を設定しておかないと気が済まない性格であるゆえ、ロジカルではないが色々とやりたいベースで恐怖感に苛まれ強引に将来のやりたい事を設定していった。(自然と)

起業 201110月中旬
まずは、単純にやっていた炭プロジェクトで起業したいと思った。ケニアから帰国したばかり、金銭感覚もまだ日本に慣れていない状態で、まだ気持ちも熱かった。また、ケニアで特別な体験をしていたという想いもあり、日本で就職したくない(普通になりたくない)と思っていたのもその一因であった。

しかし、この事を母親に訴えたが、母親の一言で冷静になった。
「高校から大学まで借りている奨学金、誰が払うの?」

製品開発と就職活動 201110月中旬- 11月中旬

ケニアまでの道のり 201110月中旬- 11月上旬
確かに奨学金は自分が働いて返さなければならない。この瞬間、就職という言葉が浮かんだ。3-5年ほど働いて奨学金のお金を返済して、さっさとケニアに飛んで起業しようと思っていたが、お金の為だけ働くのは効率的ではないと思った。就職するなら、お金を稼ぐだけではなく、何らかしらの役立つスキルが早期に見に付ける事が重要だと考えたからだ。さて、そのスキルとはデザインよりも現場により近く、必要とされているエンジニアリングスキル。そして、奨学金を返し終える期間(3-5)の短期間でエンジニアの基礎的なスキルを学ぶ事ができる企業で働こうと考えた。ちなみに、その時の自分の技術的スキルはほぼゼロ。

奨学金を返し終わり、かつエンジニアをある程度身に付けた後は、起業の前にケニアの技術系の会社(Kickstartd.light etc)に転職しようと考えていた。これは、この時既に少し冷静になっていて、炭ビジネス等で直ぐに生活できるほどの利益を稼げると思っていなかったからである。そこで、ケニアでの昼の仕事で技術系の仕事をしつつ、同時に夜の仕事で起業の種を蒔き、芽を育てようという戦略で考えていた。ただ、まだ自分がエンジニアとして生きて行く必然性を見いだせないままであり、ふわふわしていた。

そして、これが当時(2011年10月10日)作った資料である。


そうと決めれば、どの企業がエンジニアのスキルを早期に見に付けるのが最適であるかと考えるようになった。特に、ケニアで今後働く事を踏まえ、グローバルな環境で働ける企業に絞る事にした。
次に、たまたま大学の先輩がある技術系のグローバル企業で働いていた為、その先輩とその友人から色々と話を聞く事にした。話を聞き、企業によって若手のエンジニアを育成する様々な研修制度がある事が分かり、それを一つの企業の選択方法とする事にした。

工場見学 201111月中旬
それからリサーチを重ね、興味があったある企業の工場見学をする事を思い立った。それは現場に行けばなんとなくイメージがつかめると同時に、アピールになるのではと思ったからだった。さて、人事の人にメールをすると、たまたま運良くその社員が工場見学する予定があり、自分もそれに参加出来る事ができた。
そして、なんとその後、同じ大学出身という事もあり技術開発と製造の部長クラスのお二方とお会いする機会を頂いた。こんな学生一人になんとも贅沢な一時であった。当然関心は技術開発の方であったが、製造部長のこれまでのユニークな職歴が頭に残り、その後研究室に帰ってから何となく、その製造の職種説明を見る事にした。
それには、プロダクトを最適に生産するには購買、ロジスティックス、製造、生産管理、ロジスティックス等の各部署を有機的に繋がらなければならず、それを管理するのが『サプライチェーン』という職種だと書かれていた。

これを見た瞬間、ケニアでの出来事がフラッシュバックし、これが自分の求めるスキルだと直感でわかった。


6.2 一級品の武器
サプライチェーンと就職活動 201111月後半

- 原体験
Webでサプライチェーンという職種を知った時に、これが夢を実現するスキルであると直感でわかったのはケニアで2つの原体験に直面したからであった。

1.   ソーラーランタンの故障
もともとケニアに行ったのはソーラーランタンがどのように人々の生活を変えているのかを調査する事が目的であった。これは当時適正技術という軸で自分の道を開拓したいと思っており、より現状を知るには現場に赴くのが一番だと思ったからであった。
さて、具体的な話はその4で述べているが、ここで直面した原体験とは、ケニアの非電化地域に導入されたソーラーランタンが初期不良により壊れてしまったという事実だった。
このソーラーランタンはデザインが逸材で国際的なコンペティションで賞をもらっていた為、当時の自分が考えていたデザイン神話に一石を投じる出来事だった。この時は単に品質管理は重要だと考えていたが、
今はこのサプライチェーンという言葉と有機的に結びつき、『デザイナー、エンジニアが幾ら完璧にプロダクト設計したとしても、品質管理が疎かになってしまったら消費者を満足させる事ができない』と考えるようになった。

2.   炭を生産する為の仕組み創り
ソーラーランタンが壊れてしまった後、メインの活動として開始したのがMITで開発された農業廃材から炭を作る技術を普及する事だった。最初は、かの有名なMITで開発された技術なんだから全てが完成されており、技術の普及も簡単にできるだろうと高を括っていた。また、世界を変えるデザインにも紹介されていたのもその一因であった。

しかし、西ケニアの非電化地域に導入してみると、様々な問題に直面した。まず、大きな原体験はそれまで生産技術で完結すると思っていたが、当然それだけでは炭を生産出来ない事を実感した。農業廃材は確かに西ケニアには大量にあるが、季節、距離等から廃材を大量に入手できる事が難しい環境である事が分かった。(詳しくはこちらから) 結局、廃材を安定的に入手する為、廃材を大量に保有している製糖会社のマネジャーとアポを取り、先方にメリットを訴求し、廃材を卸してくれるような仕組みを構築する事ができた。
次に生産技術自体も現地にローカライゼーションされていない事が判明した。例えば、キャッサバは現地で食べ物として扱われている為、炭の材料として使用するには抵抗がある、ドラム缶は初期コストが高いうえ、村では手に入らないetc

この実体験もサプライチェーンという言葉と結びつき、『生産技術だけでは物作りは完結せず、消費者を満足させるには現場にフィットした生産体制を築き上げる必要がある』と考えるようになった。

さらに、これらの実体験から、品質管理、購買のピースが欠けてもダメだが、それ以外の他の要素(製造、ロジスティックス、アフターサービス、生産管理等)も欠けても全体として完成されず、消費者満足度の減少に繋がるのではと考えた。つまり、自分はこれらのどれかの要素から貢献するのではなく、サプライチェーンという全体の視点からこれらの要素を管理したいと思うようになった。なぜなら、幾ら自分がある要素(例えば品質管理)Valueを提供したとしても、他の要素が欠けてしまう可能性があるからである。

まとめると、この2つのケニアでの原体験からサプライチェーンに最も潜在的に問題意識を持っていた部分であり、これからこれを自分の専門性にしたいと思った。


【まとめ】
起業、就活?⇒留学が消えた事からその埋め合わせをしようと、とりあえずゴール設定をして、行動を起こす。
サプライチェーンとの出会い⇒ケニアでの2つの原体験からこれが自分の専門性にすべきだと直感で分かった。


次回、最終回
こうご期待!


P.S. 駅伝とサプライチェーン(おまけ)
ここからは妄想です。
さて、このサプライチェーンを単純化し駅伝(馴染みが深い箱根駅伝)で例えると分かりやすいと思う。

駅伝のゴールは総合優勝である。
総合優勝する為に、監督はそれぞれのコースの特徴を踏まえ、持っているリソース(選手)から選手の特性、体調等を踏まえ走者を決めていく。例え5区の山登りで区間新記録の偉業を成し遂げても、次の区間でタスキが途切れたら、この総合優勝は叶わない。その為、監督は全体を見て、タスキがどうやったら一番で最後まで繋がるかを考える必要がある。

一方、サプライチェーンのゴールは最終需要(消費)に対して、小売・中間流通・製造の供給の連鎖の全体最適を図ることで、利益を最大化する事である。
全体最適をする為には、それぞれの要所の特徴を捉え、限りあるリソースから、資金、人材等を分配しなければならない。品質が高く、納期が短く、価格を安価であれば、消費者満足度に繋がると同時に、競合との競争優位に立つ事ができ、持続的にビジネスを展開できる可能性がある。しかし、サプライチェーンの各要素どれか一つでも欠けてしまうと、上記のケニアの例にようになってしまう。さらに、駅伝とは違って、業種、市場の動き、技術革新等から最適解は常に変化している。
この辺の話は妄想レベルで話しているので、実際に働いてみてどこまでズレがあるのかを確かめて行きたいと思います。

2 件のコメント:

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